ICE (Internal-Combustion Engine; 内燃機関) 車からEV (Electric Vehicle; 電気自動車) への生産移行は、自動車試験の HSE (Health, Safety, and Environment; 衛生、安全、環境の略称) に新たな課題をもたらしています。自動車産業における電動化は、車両試験に大きな影響を及ぼしています。バッテリを搭載した製品から出火する火災や熱暴走 (リチウムイオン電池が制御不能となり、発熱・発火状態に陥る) がもたらす危険性は、HSE において重要課題となっています。自動車メーカーでは、こうした熱暴走が引き起こすおそれのある重大要因からオペレーターを守るために、さまざまな取り組みを進めています。車両試験施設や車両の組立現場などで熱暴走による事故が発生した場合、車両を施設からすばやく運び出し、安全な指定区域 (人や周囲の建物から離れた場所、プールや防爆室など) に移動させる必要があります。こうした状況下では、ビークルムーバー(車両運搬機)が役に立ちます。
EV革命に欠かせない安全・セキュリティ対策
Stringo 社が提供する Thermal Runaway Enhancement Kit (熱暴走対策キット; TREK) は、オペレーターと作業現場の両方に対する保護を向上させます。オペレーターはビークルムーバーを遠隔操作することで、距離を保ちながら車両移動が可能となり、また、安全性を向上させる追加機能を装備することで、危険性が高い状況下でも人的介入を最小限にとどめた状態で、迅速かつ安全に車両を移動させることができます。TREK を搭載した Stringo マシンは、オペレーターや周辺環境を脅かす熱暴走の危険が生じた場合に、危険性のある車両を施設からすばやく運び出して安全な指定区域に移動させるなど、きわめて重要な安全策を提供します。
「お客様にとって、Stringo ビークルムーバーは車両を移動させるための実用的なツールであることはもちろんですが、従業員の安全面に配慮した投資でもあります。従業員や車両を事故から守り、危険な環境 (車両を手で押して移動させるなど) による長期的な健康障害を防ぐこと—— 安全性の確保は当社の優先事項です」
「熱暴走」– 要点とその危険性
熱暴走現象が発生する温度: リチウムイオン電池の熱暴走現象が発生する温度は、化学組成、大きさ、構造によって異なりますが、一般的には 130℃ ~ 200℃ と考えられています。
主な要因: バッテリセル内部の発熱量がバッテリ自体の放熱量を上回り、制御不能な状態に陥り、(短時間で 20℃ 以上の温度上昇など)急激な温度上昇を引き起こすと、発熱・発火状態に陥ったり、有毒ガスが放出されたり、場合によっては消火が困難な大規模な火災や爆発を引き起こす可能性があります。
安全動作範囲: リチウムイオン電池は通常、約 60℃ まで効果的に動作します。温度が 60℃ (140°F) を超えると、劣化が急速に進み、熱暴走や故障を引き起こすリスクが高まります。
火災の消火: リチウムイオン電池の火災や爆発は消火が難しく、長時間にわたって燃え続ける可能性があります(バッテリ内部で電極が分解して内部で酸素が生成されると、外部の空気がなくても燃焼が持続する場合があるため)。
Stringo 社が提供する熱暴走対策キット「TREK」
※ Stringo S5 PLUS および S5 4WM のみに対応
「TREK」は、熱暴走などの危険性が高い状況下でも、安全かつ高い制御性で Stringo マシンを操作できるように設計されています。
「TREK」に含まれる主な装備
- 遠隔操作 (リモートコントローラによる操作)
標準の操作ハンドルと同等の機能で、最大 100 メートル離れた位置から簡単に操作できます(障害壁がある場合は除く) 。エラーが発生した場合でもオペレーターが安全に遠隔で車両移動を行えるように、制御を「緊急解除 (Emergency Override)」できる機能が装備されています。 - 熱保護プレート
バッテリの前面および上部に追加でスチールプレートを装備し、熱からバッテリを保護します。 - 逆止弁(油圧保持バルブ)
プレスアームシリンダに装備された特殊な安全弁により、万が一油圧系統に不具合が生じた場合でも、移送中の車両が Stringo マシンから落下しないよう保持されます。
遠隔操作
リモートコントローラを使用して Stringo® ビークルムーバーを操作 (オペレーターは常時 Stringo マシンを視認できる位置にいること) することで、オペレーターの安全性確保につながります。
追加で保護プレートを装備することで、バッテリの過熱リスクを低減します。
逆止弁(油圧保持バルブ)
油圧ホースが損傷した場合でも、移送中の車両が落下しないよう保持します。
TREK にはハイパフォーマンス (HP) ドライブモータを搭載することもでき、出力とトラクションを最大限に高めることが可能です。この 5kW AC モータには、大型のノンマーキングゴム製の駆動輪を標準装備し、必要な局面で優れたグリップ力と強度を兼ね備え、運転精度を高めます。
