1985 年、Göran Fahlén (Stringo AB 社創業者、以下ヨーラン) は車両移動のための装置の製造を始めたものの、後世に継承されるような企業になるとは思ってもいなかった。ヨーランの子どもたちが Stringo 社で夏休みにアルバイトをすることはあったものの、まさか大学進学後に再び戻ってきて長期的なキャリアを築くとは… このような未来は予想していなかったと言います。
現在では、創業者ヨーランの娘 Nina Thelin (以下ニーナ) が CEO を務め、息子の Johan Fahlén (以下ヨハン) が購買・製造のプランニングを担当し、協力して経営を支えています。
「子どもたちに、私の事業を継ぐようにプレッシャーをかけたことはありません。ですが、起業家として、そして父親として、子どもたちが事業を継承してくれたことを大変嬉しく思っています」
これまでに習得したことすべてを Stringo に
大学での学びの視点は、ニーナにとって、改めて父親の事業を見つめるきっかけとなり、自身が幼いころから共に歩みを進めてきた「Stringo」社にさらなる関心を寄せる結果となりました。
「経済学や人事、マーケティングなど、講義で習得することがすべて Stringo に活かせると感じました。ブランドの確立、販売代理店との連携、強いチームづくりや企業文化の構築など—— Stringo には私が求めるすべてがあるように思えたんです」
大学卒業後、ニーナは自身が習得したことを実際に活用したいと考え、父ヨーランに事業への参画の機会を求めました。取締役会に出席したり、「Stringo」社をより深く理解するために耳を傾けました。
「初めて会議に出席した瞬間から、私は夢中になりました」
リーダーシップの移行は自然な流れ
父から娘へ—— リーダーシップの移行は段階的に進みました。この移行は、Stringo 社の発展において自然な流れだったと、父娘ともに振り返っています。成熟度や状況など、事業の成長には、フェーズごとに異なるリーダーシップが求められるからです。リーダーシップについて娘ニーナは次のように語っています。
「父は幅広いスキルを持ち、Stringo 機材の製造や研究開発においても深く関わっていました。私が引き継いだ現在では、それぞれ専任のマネージャーが担当しています。創業期であれば、私がこうした職務に就くのは適切ではなかったでしょう」
一方、父ヨーランは自らを、高卒の「普通の従業員」と謙遜する—— 娘のリーダーシップを称賛し、自分が CEO を務めていたら現在のレベルまで事業を成長させることはできなかったと述べ、娘の活躍を誇らしげに見守ってきました。
「販売代理店との交渉や人事管理… いずれも容易な業務ではありません。ですが、娘は驚くほどたくましく、あらゆる業務に対処しています」
自らのルーツを大切に守りながら 世界に挑み続ける
Stringo 社は現在、ヨーロッパ、北米、アジアの自動車業界を中心にサービスを展開しています。Stringo 製品 (ビークルムーバー) はすべて、創業の地、スウェーデン北部ニーランドで製造されています。購買・製造のプランニングを担当する息子ヨハンは父親の理念を受け継ぎ、部品や包装材などの資材は、可能な限り地元企業から調達するよう努めていると言います。
「当社は地元のサプライヤーとの関係を大切にしています—— 雇用機会を創出するだけでなく、地域の他の企業と連携して地域社会に貢献できることは良いことだと感じています」
また、家族経営であるかどうかに関わらず、Stringo 社は常に強く、あたたかい環境を築いてきたと語ります。
「企業の成長や発展の過程においても、『仲間と一緒に歩んでいる』という事実を見失うことはありません。こうした考え方は私たちにとって重要なことであり、妹ニーナのリーダーシップにも強く反映されています」
家族経営という形態は、Stringo にどのような影響をもたらしているか—— この問いにニーナはこう説明しています。
「家族経営により、あらゆる活動において長期的な視点で物事を考えることを可能にします」
「将来、自分の決断を振り返ったときに、誇りに思えるような決断をしたい—— 会社や従業員、お客様のために、自分が正しいと確信したことを成し遂げたと思えるような決断をしたいと考えています」
ニーナのこうした思いは、健全な収益性を維持する妨げになることはありません。
「私にとっては、収益性の高い事業を経営すること、人々を心から思いやり、敬意をもって接すること、これらは矛盾することではありません」
この先の 40 年を見据えて
2025 年、Stringo AB 社は創立 40 周年を迎えました。
次の 40 年間も「Stringo」の存在意義を保ち続ける秘訣について、ニーナは次のように語ります。
「一言でいうと、世界に誇れる製品を生み出し続けるための『継続的な開発』です。産業は絶えず進化を続け、当社も同様に進化し続けています。お客様は新たな課題に直面すると、当社に知見や助言を求めてきます。私たちは、お客様と連携して課題に挑むことに大きな誇りを感じています。『お客様の課題を解決すること』が Stringo の真髄だと思っています。この信念こそが、今日まで私たちを導いてきた原動力であり、今後も継続していきたいと考えています」
現時点では、Stringo を次の時代 (三代目) に継承していくかどうかを語るのは時期尚早です。Stringo 社でアルバイトを経験したヨーランの孫もいますが、ニーナとヨハンは、創業者の「プレッシャーを与えない」という方針をしっかりと守り続けています。
「一番大切なのは、自分が楽しむことです。Stringo では、楽しいことがたくさんありました。私の子どもたちも楽しんでいると思います。確かに、会社経営には多大な努力を要しますが、大変やりがいを感じられるものでもあります—— Göran Fahlén」
創業者の思いをしっかりと継承しつつ、Stringo 社は次の 40 年を見据えて力強く進化を続けていきます。