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自動車試験施設におけるイノベーションとカスタマイズ  ~ 1 ミリ単位の調整がカギを握る現場

Stringo at Horiba Mira, UK


自動車試験施設で車両を安全かつ効率的に移動させるには、強度と汎用性を兼ね備えたツールが必要です。この記事では、Stringo AB 社 CTO である Magnus Grafström が、自動車試験の担当者に最も人気のある Stringo モデルや、Stringo の革新的な機能についてご紹介します。また、当社の研究開発部門が挑んだミリ単位の調整、実現に至るまでの軌跡についてもご紹介します。

自動車試験施設における車両の移動には、他のユーザーが求める要件とは異なるニーズや課題が伴います。自動車試験を行う担当者には、次のような傾向が見られます。

 
上記の点を考慮すると、堅牢かつ汎用性の高いビークルムーバー(車両運搬機)が自動車試験施設で採用されるのは自然な流れと言えます。この流れを示す明確な事例が、Stringo S3 および Stringo S5 モデルの「PLUS シリーズ」です。近年、この Stringo PLUS シリーズに対する注目が高まっています。そこで、Stringo PLUS シリーズが自動車試験の現場でなぜこれほど注目されているのか、その背景について Magnus が詳しくご説明いたします。

自動車試験における車両の移動 ~ Stringo PLUS シリーズを導入する 3 つのメリット


1. 幅広い車種に対応できる汎用性

自動車試験施設では、ダイナモメーター(テストセル)、環境試験室 (チャンバー)、風洞試験などあらゆる試験環境で、さまざまな車両を移動させる必要があります。自動車の車種にかかわらず、ひとつのツールですべての車両移動に対応できることが理想的です。

ビークルムーバー Stringo はすべてのモデルで、車両積載面の幅をご要望に合わせてカスタマイズできる柔軟性を備えています。Magnus によると、Stringo PLUS シリーズではこうした要素が次のレベルにまで高められていると言います。

「Stringo PLUS シリーズは標準的な Stringo モデルよりもフロント部が低くなっており、グランドクリアランス(車両の下部と地面との間の距離)が最適化されています。これにより、小型車や車体の低いスポーツカー、大型の SUV や配送トラックに至るまで、あらゆる車種車両をビークルムーバー Stringo 1 台で移動させることができます」


2. 段差や障害物にも対応できるボギーホイール

自動車試験施設で車両を移動させる際には、レールやエレベーターの溝を超えて走行させたり、また、試験する建物の間を移動させる場合には、凹凸のある路面やシャッター下など段差のある場所を走行することもあります。ボギーホイールが装備されている Stringo PLUS シリーズであれば、速度を落とすことなく、段差や障害物をスムーズに乗り越えることができます。ボギーホイールについて Magnus はこう語ります。

ボギー台車※1 を活用したこの技術ソリューションには、前輪を横一列に 4 カ所に配置する通常の Stringo と比べ、前輪 2 つのボギー代車の 1 つに取り付けられた 4 つのホイールそれぞれに荷重配分が均等化されるという大きなメリットがあります。これにより、車輪の摩耗が軽減され、ビークルムーバー全体の安定性が向上します。ボギーホイールという技術ソリューションにより、障害物の乗り越えもスムーズになります」

※1 ボギー台車: 車体に対して水平方向に回転可能な装置をもつ台車の総称


3. 高い使用頻度にも耐える堅牢な設計

Stringo PLUS シリーズは複数の要素において、標準的な Stringo モデルよりも堅牢に設計され、高負荷での使用環境にも適しています。横材の追加によるフレーム構造の補強や、強力なパワーを発揮できる高圧の油圧システムなども堅牢な設計要素の一例として挙げられます。Stringo マシンのフロント部のモジュール設計やベアリングに使用する資材などにも検討を重ね、優れたメンテナンス性を実現しています。あらゆる要素を結集させた結果、高負荷での使用環境においても長時間にわたる使用が可能になっています。

Magnus は次のようにも述べています。

「自動車試験施設では、一日 24 時間 、週 6 日のシフト勤務の中で、非常に高い頻度でビークルムーバーを使用する担当者もいます。Stringo PLUS のマシンは、このように過酷な使用環境下でも非常にスムーズに稼働しています」

「テレスコープ拡張伸縮機能」と「ナローボギーホイール」が自動車試験施設にもたらすもの


ビークルムーバー Stringo は、いずれのモデルもお客様のご要望に応じてカスタマイズ製造を行っていますが、使用環境によってはさらなる微調整が必要になる場合もあります。特に自動車試験施設では、ビークルムーバー Stringo のカスタマイズが試験効率を向上させる鍵となるようです。カスタマイズ事例について、少し詳しくご説明します。

つい先日、当社の研究開発部門が手掛けた Stringo S3 PLUS のカスタマイズでは、数ミリ単位の調整という課題に挑むことが求められました。
Magnus はこのときの取り組みについて、次のように振り返っています。

「お客様が使用される車両仕様に、オーバーハングが長い車両を移動させる Stringo を必要としていました。通常の『テレスコープ伸縮機能』では長さが十分ではなかったため、300mm 追加することになったのです」

narrow bogieサンプル図

Stringo PLUS with narrow bogies

また、「お客様の試験施設要件に合わせて、Stringo の前輪がダイナモローラー部への乗り上げを回避できる様に中央通路幅(この場合は 720mm)に合わせる必要がありました。この要件を満たすために、追加で設計・開発することになりました。その結果、ボギーホイール間の幅を狭める『ナローボギーホイール仕様』が考案されたのです」


narrow bogie-2

サンプル図

このナローボギー仕様は大好評を博しています。もちろん電気自動車(EV)や SUV のように 4 輪がロックされる車両に対しては、4 輪をリフトする Stringo 4WM に同様のカスタマイズをすることが可能です。

 

自動車試験施設におけるカスタマイズ事例について詳しくは、『How customised vehicle movers improve automotive testing efficiency / ビークルムーバーをカスタマイズして車両試験効率を向上させる方法 (英語のみ)』をお読みください。

 

JP - A step by steg guide

電子書籍『ビークルムーバーのカスタマイズに関する詳しいガイド』

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