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押収車両を効率的に管理してコスト削減 ~ 米スポケーン警察署の事例

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「自動車」は、置かれている状況や立場によってさまざまな意味を持ちます。普段何気なく運転している車も、殺人事件の捜査においては重要な証拠となる場合もあります。
米国ワシントン州東部に位置するスポケーンの警察署では、押収した車両に直接触れることなく移動させるために、電動式のビークルムーバー(車両運搬機)を活用しています。事件や事故の鍵を握る車両は、適切な時期まで押収時の状態をそのまま維持する必要があります。電動式のビークルムーバーを導入することで作業効率を高め、その結果、市政において多額の経費削減を実現しました。

犯罪に利用された車両はどのように取り扱われるのか—— みなさんは想像したことがあるでしょうか。スポケーンの警察署では、管轄地域内およびその周辺で発生した事件に関連する車両のほぼすべてを受け入れています。車両は、署内にある証拠品保管施設で保管されます。この施設では数百台もの車両が保管されており、中には 10 年以上も保管されているものもあります。関連する事件の捜査や裁判などの手続きが完全に終了するまで保管されるのです。  

まるで「巨大なテトリス」 

事件の解決や捜査の進捗に応じて、また、新たな事件に関連する押収車両の搬入など—— 施設で保管されている車両は常に移動の必要性が生じています。スポケーン警察署で証拠品管理の責任者を務める Kevin Berry 氏は、彼が率いるチームでは日常的に「ある課題」に直面していると言います。「ある課題」とは、ガレージや自動車ディーラーなどの車両保管施設が抱えている課題と同じものでした。

利用可能なスペースを最大限活用したい—— 
限られたスペースで効率的に車両移動を行うにはどうしたらいいか—— 

Kevin Berry 氏によると、「巨大なテトリス」をプレイしているような状況だと言います。
「わずかでも空いているスペースがあれば、車両を詰めてできるだけ多く保管できるようにしています。スペース不足は明らかです。操作性や利便性の観点から見ても、施設の収容能力を大幅に超えています」 

しかも警察署では、そのほかの車両保管施設と異なり、複雑な要件が加わります。保管車両の移動が必要でも、多くの場合、車両に直接触れたり、車両を手で押したりすることができません。車両そのものが事件や事故の証拠品であり、証拠を棄損してしまう恐れがあるからです。 保管スペースの調整目的以外にも、車両の内部に、盗難品など犯罪に関わる品や事故の要因となる品が隠されていることが多々あり、内部をくまなく調べるために車両を移動させる必要があります。では、こういった現場では、人の手を介さずにどうやって移動させているのでしょうか—— 

これまでスポケーンの警察署では、レッカー車をレンタルして車両を移動させていました。この方法では、時間を要する上に費用対効果が見込めるものではありませんでした。転機は 2012 年、Stringo ビークルムーバーを購入したのがきっかけでした。購入後 3 年以内に投資を回収し、その約 10 年後には、Stringo マシンで 5,000 台以上の車両移動を行いながら、30 万米ドルを超えるレッカー費用の節約を実現しました。現在では地区内外の多くの警察署でも多く採用されており、Stringo マシンの視察や試乗を求めて、スポケーン地域内外の法執行機関が警察署に訪れるほど注目されています。  

 使命を果たすことと、やりがい  

Stringo ビークルムーバーは自動車業界で主に活用されていますが、警察署におけるこうした成功事例からも、Stringo マシンの汎用性の高さをご理解いただけるでしょう。Stringo マシンは、自動車製造ラインや車両試験施設での車両移動にも使用されていますが、実はクラシックカー博物館でも広く採用されています。
スポケーン警察署の証拠品保管施設で管理されている車両は、自動車の製造ラインで完成したばかりの新車や収集家が憧れて止まない貴重なクラッシックカーとは対照的で、犯罪事件や悲しい出来事が刻まれています。この現場で Kevin Berry 氏率いるチームにとって重要なのは、目の前の任務を遂行することです。つまり、事件を解決して、いち早く車両を持ち主のもとへ返還すること、あるいは廃棄処分を行うことを目指しています。Berry 氏は保管施設の役割について次のように思いを語っています。

「この施設で保管されている車両は、何かしらの事件や事故に関連している物品の一部と捉えています。事件や事故の詳細について深く思案することはありません。ただ、盗難品や銃器、コンピューターなど、他者が発見できなかった物品を見つけ出し、正当な持ち主の方に返還できることにやりがいを感じます」

 

そのほか、自動車にまつわる興味深いストーリーについては、『A Place of Wonder and Will / 感嘆と熱意が共存する場所(英語のみ)』もお読みください。米国メイン州にある Owls Head Transportation Museum でイベントマネージャーを務める Toby Stinson氏のインタビューをご紹介しています。ハリウッド映画で人気を博した「イット・ガール(It Girl)」こと Clara Bow が所有していた 1929 年式のロールスロイスについても語られています。 

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