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ビークルムーバー Stringo が EV 車両試験の熱暴走対策で果たす役割

Stringo S5 4WM with TREK Option (Thermal Runaway Enhancement Kit)

リチウムイオン電池における熱暴走は、バッテリセル内部の発熱量がバッテリ自体の放熱量を上回り、制御不能な状態に陥り、急激な温度上昇を引き起こします。その結果、発熱・発火状態に陥ったり、有毒ガスが放出されたり、場合によっては消火が困難な大規模な火災や爆発を引き起こす可能性があります。車両試験施設や車両の組立現場などで熱暴走による事故が発生した場合、車両を施設からすばやく運び出し、安全な指定区域 (人や周囲の建物から離れた場所、プールや防爆室など) に移動させる必要があります。この記事では、Stringo AB 社が自動車メーカーと緊密に連携を図りながら開発したソリューション、また自動車業界からの反響についてご紹介します。


英国を拠点とする Stringo AB 社の長年のパートナー企業 Rod Brown Engineering Limited—— 同社で営業・技術担当ディレクターを務める Phil Glover 氏は自動車業界の顧客との会話を通じて、熱暴走のリスクから従業員や施設の安全性を確保するソリューションへの需要が大幅に増加しているように感じると言います。また、一般的にこうした取り組みは、ビークルムーバー(車両搬送機)の購入に関わる運用部門ではなく、従業員の安全衛生や事業の維持保全に関し責任を担う担当者から発案されることが多いと言います。

Phil 氏は現状についてこう語ります。
「これまで老舗メーカー各社は、競争力を維持しながら、EV (Electric Vehicle; 電気自動車) を市場に投入するという重圧の中で前進を続けてきました。その結果、厳格な試験や認証が数多く行われています。また、自動車には数百万ポンドもの価値があり、毎日多くの人々が作業する施設で極限まで試験が行われています。事業の維持保全の観点から見ても、安全性を確保するソリューションの重要性は極めて高いのです」

自動車メーカーとの共同開発から生まれたソリューション

自動車業界で車両移動に関する課題が持ち上がると、Stringo に注目が集まります。熱暴走対策においても例外ではありません。Stringo AB 社で CTO を務める Magnus Grafström は開発したソリューションについて次のように説明します。

「安全衛生の専門家に、リスク対策に役立つ技術的ソリューションの考案を依頼されました。そこで、自動車メーカーとプロトタイプを共同開発し、実際に現場で試験や検証を行いました。

Thermal Runaway Enhancement Kit (熱暴走対策キット、通称: TREK)』と呼ばれるこのソリューションは、現在オプション装備として、Stringo S5 PLUS および Stringo S5 4WM モデル用に提供されています。TREK は、バッテリ重量増加による車両の重量増への対応、4 輪すべてがロックされた車両の移動、遠隔操作など、EV への移行を見据え、これまで Stringo 社が開発してきた技術をベースに開発されています。

そのほか TREK には、スチールプレートを用いて耐熱性を向上させたり、プレスアームシリンダに特殊な安全弁を装備することで、万が一油圧系統に不具合が生じた場合でも、移送中の車両が Stringo マシンから落下しないよう保持できるようにするなど、さまざまな装備が含まれています。こうした機能を組み合わせることにより、緊急避難機能の実現を図っています。 

このソリューションを考案した主な目的は、あらゆる状況下でビークルムーバーが確実に作業を成し遂げることができるようにすることです。日常的な運用というよりは、熱暴走のリスクがともなう緊急事態を想定しています。緊急時には、車両移送中にビークルムーバーが停止したり、車両がビークルムーバーから落下したりするような事態が起きてはならないのです。車両を安全な場所まで確実に搬送する必要があります」 

一刻を争う重要な局面で 人命と資産を守る

Phil Glover 氏(Rod Brown Engineering Limited)は、TREK の導入により、壊滅的な影響をもたらすおそれのあるリスクを軽減でき、時間面、コスト面とも効率的な手段を顧客に提供することが可能になると言います。

Stringo ビークルムーバーを使用すれば、車両を建物の外に運び出し、安全な場所へと移動させることが格段に容易になります。企業にとっても、彼らの保険会社にとっても、施設全体を建て替えるより、Stringo マシン 1 台を TREK にする方がはるかに望ましいと考えるでしょう」

また、安全の確保と迅速な避難の実現は、ビークルムーバーの導入だけでは成り立たず、多くの要素を考慮する必要があるとも言います。

「出入口を常に確保し、避難の妨げにならないよう障害物は置かないことが重要です。どの職場でも見られる基本的な安全基準ですが、熱暴走の危険性がある現場では、この安全基準を順守することがさらに重要となります。実際にそういった危険な事態に陥った場合、一刻を争うことになります」

「驚きで言葉を失う顧客たちを目の当たりにして——」

Phil Glover 氏によると、TREK は明確な価値を提供する製品であるため「売り込みやすい」製品であるものの、英国の大手自動車メーカーから依頼を受け、Phil Glover 氏率いる Rod Brown Engineering とStringo AB 社が共同で自動車の生産ラインで実際に TREK のデモを行ったときのことを振り返り、製品の良さを言葉で説明するよりも、お客様に実際に見ていただく方が確実だと言います。

「デモに与えられた時間はわずか 7 分間でした。短い時間のように感じますが、1 分間で数千ポンドもの価値を創出する工場の製造ラインを停止させること、つまり、デモを行うこと自体が相当な投資にあたると考えられます」

デモには、安全衛生や事業管理の担当者など、別部門や他の拠点からの参加者も見られました。

「(Stringo マシンを使用したデモで)わずか 21 秒で車両を製造ラインから運び出すことができたのを目の当たりにして、驚きのあまり言葉を失った参加者も大勢見られました。そして、きっちり 7 分後には組み立てラインが再開し、作業員は各自持ち場での作業に戻りました」

参加者を魅了したこのデモの後、即時に契約が成立しました。

デモを行ったこのメーカーでは今後、自社施設に納入されるビークルムーバーはすべて「TREK を基本要件とすること」が決まったと Phil 氏は締めくくりました。

熱暴走対策への取り組みとリスクマネジメント   * EV (電気自動車) への生産移行と熱暴走リスク   * Stringo 社が提供する熱暴走対策「TREK」   * 遠隔操作による制御を可能にしてオペレーターの安全性向上   * 保護プレートと逆止弁による追加の安全装備 資料をダウンロードする